龍谷大学
Highlights
2019年に創立380周年を迎える龍谷大学では、授業やゼミ活動、自習などの 際に学生が持ち込むPCやタブレット、スマートフォンといった各種デバイスの ネットワークアクセス手段として、深草・大宮・瀬田の3キャンパス全域でWi-Fi 環境を展開しています。このWi-Fi環境に必要なネットワークにおいて、 キャンパス内のL2スイッチやアクセスポイント(以下、AP)としてCisco Meraki ソリューション(以下 Cisco Meraki)を全面的に採用、教職員や学生に対して 快適なネットワーク環境を提供しています。
Cisco Merakiのダッシュボードを見れば、 ワイヤレスだけでなくワイヤードも統合 管理できます。この便利さを一度でも 経験すると、複数ツールでの運用管理を 不便に感じてしまいます。 情報メディアセンター事務部 秦 昌宏 氏
1639年に西本願寺境内に設けられた教育施設「学寮」がその原点である龍谷 大学は、日本で最も長く教育・研究活動を行ってきた教育機関であり、2019年 には創立380周年を迎える伝統ある大学です。浄土真宗の精神を建学の精神 とする大学であり、現在は京都市にある深草と大宮、そして、滋賀県大津市に ある瀬田の3つのキャンパスに9学部1短大を設置、2万人を超える学生が在籍 しています。
課題
龍谷大学では、2013年に情報化基本方針として「自律的・主体的な学生の 育成」と「大学が取り組む諸事業のプロセスや成果の連携・共有・再構築」に 寄与するICTの有効活用を実現することを中核目標として位置づけている。 「基本方針を具現化するための概念として、“シンプル” “スマート” “フレキシブル” “利用者指向” “成果・結果重視”を基本姿勢・視点とするICT環境の実現が求め られています」と説明するのは、学内の情報インフラの企画から運用までを 手掛ける情報メディアセンターのトップ、情報メディアセンター長 本多 滝夫 (法学部 教授)氏です。
そんな同大学では、2000年代前半から無線LAN環境の導入を進め、2010年の 学内ネットワークリプレイスの際には、授業での利用を前提に中・大教室の一 部にWi-Fi環境を整備し、その後の年次計画で徐々にエリアを拡大していった 経緯があります。そして2015年に行われた、学生の主体的な活動支援や多文化 共生キャンパスの実現などを目的に建設した「和顔館」竣工を契機に、アクテ ィブラーニングの推進やスマートフォンによる出席確認・授業アンケート回答な どが可能な環境づくりに取り組んできました。
しかし、これまで敷設してきたWi-Fi環境は、スマートデバイスによる同時多重 アクセスは想定されておらず、さまざまなデバイスからのネットワークアクセスが 急増するなかで、通信環境の悪化を招く場面も出てきていました。「急激な 利用スタイルの変化が起こったことで、利用環境が悪化してしまうケースも ありました。ただし、つながらないと指摘を受けて現場に駆けつけても、到着したときには改善してしまっている場合も。過去の状況が見える化できない ことが大きな課題でした」と同センター 事務部 秦 昌宏氏は当時を振り返り ます。また、ネットワーク運用に携わる人員が少なかったことから、Wi-Fiエリア の拡張のためにAPを増設しても、それらを管理できる環境づくりが急務と なっていました。
Wi-Fiへの依存がさらに進んでいくことに なりますが、特にセキュリティとの共存が とても重要になってきます。 情報メディアセンター事務部 部長 屋山 新
ソリューション
そこで、シンプルでスマート、かつフレキシブルな環境づくりを前提に選定を 行った結果、同大学が注目したのがCisco Merakiでした。「利用者の端末や OS情報などはもちろん、どのAPといつ接続したのか、どんなアプリケーション を利用したのかといった情報は、Cisco Merakiの標準機能としてクラウド上に 残すことができます。なかでも見える化の部分の完成度が圧倒的に高いのが Cisco Merakiでした。障害対応時はもちろん、将来的に投資をする際の 基礎情報として活用できる点も高く評価しました」と同センター 事務部 丹羽 奈緒子氏は説明します。
また少人数で運用している情報メディアセンターだけに、できる限り運用が容易 なものを意識したと説明します。「事前に製品デモを拝見したところ、交換も 数分でできますし、初期の設定もAPに管理番号を付けて現場のLAN環境に 接続するだけ。接続した時点でクラウドとコネクションを張って設定が自動的に 行われるという簡便性は魅力」と丹羽氏。無線と有線が同じダッシュボード上で 管理できる点も、省力化につながる部分として選定の重要なポイントの1つと 指摘します。
管理面では、専門職でなくても状況把握しやすいGUIを秦氏は高く評価しました。 「日々の運用管理の面はもちろんですが、私のように他部署も経験していくよう な専門職でない人間でも、現状の課題が把握しやすい。技術的な詳細は分からず とも、大学の政策的な側面も踏まえたうえで、なぜこれが必要なのかをきちんと 理解できるような人材の育成が教育機関として必要だと考えていす。Cisco Merakiであれば、専門職に丸投げすることなく、自身としても理解しながら ネットワーク運用に携わることが可能となり、人材育成の観点からもとても 効果的な機器であると感じました」と秦氏。
将来性の点でもCisco Merakiを高く評価しました。「各社ともAPI連携は 掲げていますが、Cisco Merakiはすでに現実的に対応を進めていました。 クラウドに蓄積された利用者情報も際限なく蓄えることが可能なわけでは ありませんので、自分たちでAPIにて取り出せる環境が実装できる点はとても ありがたい」と丹羽氏。実はAPIを利用して、将来的には学生などへの情報提供 も検討しており、その環境が実装できる点も大きな選択のポイントに挙げて います。なお、AP側でBluetooth Low Energy(BLE)ビーコンが標準対応で きることで、さまざまな研究に利用できる点も理工学部から評価の声が 挙がっています。
結果~今後
現状は、コアスイッチ「Cisco Nexusシリーズ」が、キャンパス間を接続する L3スイッチには「Cisco Catalystシリーズ」が導入され、深草と瀬田、大宮の 各キャンパスにCisco MerakiのPoEスイッチがおよそ400台、APが1400台 以上展開されており、キャンパス全域がWi-Fiエリアとなっています。SSIDは 教職員用と学生用、国際学術ローミング(eduroam)用、事務用など用途に応じて 複数のSSIDを利用、管理者数名にてダッシュボードを見ながら日々の運用管理 を行っています。「安定したWi-Fi環境でネットワークにアクセスできるように なったことにより、学生同士が廊下などの空いているスペースでPCを持ち 寄ってディスカッションするなど、以前よりもコミュニケーションが活発に行わ れています」と丹羽氏は評価します。
今回から、3キャンパスでのメッシュ構造からデータセンターを中心とした ツリー構造にネットワークトポロジが変更されています。「コアスイッチはCisco Merakiを選択することもできましたが、実績からの安心感という意味でCisco Nexusを導入することでハイブリッドなネットワーク構成を採用しました」と 秦氏は説明します。
APが接続するPoEスイッチがすべてCisco Merakiに統合されたことで、 当初課題だった利用状況の見える化に成功しています。「建屋ごとの通信量など が正確に把握でき、建物に隣接する屋外からのアクセスなどこれまで予期して いなかった使い方にも気づくことができました。将来の投資に向けた基本的な 情報が得られるようになったのは大きな成果」と丹羽氏は評価します。 なお、APIを利用して設定値を一括で取得する、設置されたAPの一覧を 作成するなど、取得した情報を有効活用することも可能な状況です。
運用管理の面では、APが増えてもダッシュボードで状況が容易に確認でき、 専門の常駐メンバー以外でも対処できることが増えたと秦氏は評価します。 「VLANなどもメンバーだけで簡単に変更できますし、予備機を自分たちだけで 取り付け、一時的にエリア拡張したことも。現場にエンジニアが来なくとも リモートで確認できるなど、構築サイドもずいぶん楽になっているはずです」と 秦氏は評価します。LANに接続すれば自動的にクラウドから設定を落とし込ん でくることができるため、当初予定していた工事の期間も大幅に短縮することに 成功しているほどです。
1人が持つデバイスが増えることも 考慮し、多くのデバイスが収容できる Wi-Fi 6(IEEE802.11ax)への 展開に期待しています。 情報メディアセンター事務部 業務改善 推進室 次長 中川 昭文
今後は、ワイヤレスに接続するデバイスがさらに増えていくことが予想されてい ます。「水道・電気のような生活インフラとして、これからは“Wi-Fiが届いて当た り前”の環境になっていくのは間違いありません。すでにWi-Fiがつながりにくい 教室は先生たちからも敬遠されるほどで、インフラとしての重要性はますます 高まっていくことでしょう」と秦氏。このWi-Fiから得られた情報は、現状は管 理側で活用していますが、いずれは利用者に還元していくことも視野に入れて います。「Wi-Fiの利用状況から自習エリアの混雑情報をリアルタイムに公開す るなど、効率的な学習環境の整備に情報を活用したい」と丹羽氏は力説します。
実は理工学部のほうでは、BLEビーコンを活用した仕組みはもちろん、IoT デバイス接続やロボット同士を通信させて共同作業する研究用のネットワーク としてなど、これまでとは異なる用途へのWi-Fi活用が検討されています。「APが 設置できないエリアは、建物内に設置したAPの電波を利用することも検討して いますし、建屋間の通信をWi-Fiメッシュで行うことも検討中です。新たな用途へ の展開も視野に入れていきたい」と丹羽氏。
また大学事務業務において利用するPCは、現在、有線端末が多く利用されて いますが、2019年には事務PCの更改タイミングで、働き方改革も含めた事務 環境の刷新に向けて、今回のWi-Fi環境の整備が大きく役立つはずと本多氏は 期待を寄せています。「今回整備したWi-Fi環境が、来年以降の業務改善の土台になってきます。その下地がきちんとできたことで、業務改善活動にも積極的に取り組んでいきたい」と今後について語っていただきました。